第一章 盲愛の母 ランジェリーに残る隣母の香り


 鳥が二羽、じゃれ合うように飛びながら、さわやかな朝を演出するようにチチチとさえずっている。

 夏の本格化を予感させる晴天の下、閑静な住宅街には通勤通学の人通りが見られた。

 そんな住宅街の中でも、一際威風を放つ佇まいの邸宅がある。白さが眩しい漆喰の壁に囲まれ、かわらきの棟門を正面に持つ、いりづくりの立派な屋敷。その堂々とした門戸を開け、一人屋敷を出る少年の姿があった。

 その少年、なるたきりつの容姿は、十代にしてはだいぶ子供っぽかった。身長の順で整列すれば最前列に立つことになる背丈と、線が細く華奢な体軀。目がパッチリと大きく、可愛らしいと形容するほうがよさそうな顔立ち。

「……いってきます」

 同年代の女子の間で多少は噂になるが、特筆するほどの美少年でもないといった見目姿の彼は、見送りもない門戸に向かって小さく声をかけ、通学へと足を踏み出す。

ゆう、忘れ物ない? 大丈夫?」

「大丈夫だよ、毎朝毎朝そんなに何回も確認しなくていいから」

 律が隣家に差しかかったとき、ドアが開くとともにそこに住まう親子の声が溢れ出した。閑静な住宅地の朝には少々音量の大きな母子の会話は、その前に通りかかった少年の耳にも当然届く。その瞬間、律の目はパッと見開かれて、その声の主に向けて視線は動いていた。視線の先に捉えられる隣人の姿。母にも等しい異性と目が合う。

「あっ、りっくんおはよう。朝御飯ちゃんと食べた? 忘れ物ない?」

「おはよう、母さん。うん、忘れ物は……ない、と思う」

 小さいながら洒落たブロンズの柵の門を開けて路上に出てきたむろ祐美は、眩しいほどの笑みで律に声をかけた。

 鼻筋が通り、目鼻立ちの整った端整な顔立ち。垂れ気味の目元が、優しそうな印象を与える。淡い栗色の髪はナチュラルに毛先の遊ぶ短髪で、時折撫でるように吹く風にサラサラとキューティクルを輝かせた。

「今日も暑くなるのかしら。ニュースじゃ今年は冷夏なんて言ってたけど、嘘ねぇアレ。りっくん、熱中症にならないように水分は十分摂るのよ?」

 朝から強く照りつける太陽を手で遮り、祐美は眩しげに目を細めながら律を気遣う言葉をかける。

 母でなく姉と言っても疑われないのではないかというほど、隣家の母は若々しく美しい。そんな彼女の出で立ちは、薄いタンクトップに膝丈のスリムジーンズ、そしてミュール。露出した肩や腕などはほっそりとしているが、タンクトップの胸元は豊熟な肉付きを見せる。歳相応に緩んでいてもよさそうなそれは、見事な紡錘形の輪郭を浮かべ、尖った先端部にうっすらと桜色を透かしている。

 タイトなジーンズがピッチリと包み込んだ臀部は、ほっそりとした肩や腕の印象に対して、経産婦らしいどっしりとしたふくよかさがあった。むっちりとした肉付きもさることながら、骨盤からしてその重量感を生み出している。それらに起因する実際の大きさもそうだが、ウエストのくびれ具合とのギャップもより一層尻のボリュームが増して見える要因だろう。

 大人の女の熟して完成した肉付きと、引き締まったくびれが生み出すコークボトルを彷彿とさせる曲線は、少年には刺激が強すぎた。肉感的なボディラインを惜しむことなく見せつけるその姿に、律は顔の紅潮を覚える。

「おはよう律。昨日の夜やってた映画、観たか?」

「おはよう祐祉兄ちゃん。お風呂入ってて最初のほう見逃したけど、観たよ」

 祐美の息子である祐祉は、律より三つ年長だ。たった三つの歳の差だが、子供っぽい律に対して、祐祉はその体付きからして立派な大人の風格を持っていた。体格的な差のみならず、人格的にも兄と弟といったような二人は幼馴染みであり、実際兄弟のように育った間柄だ。

「ほらほら、もう立ち話してないでいってらっしゃい。りっくんは塾でまたね」

「うん、いってきまーす」

「あ、待ってりっくん。靴紐が解けそうになってるわ」

「いいってあとで締め直すから。な? 律。ほら、行くぞ」

「ちょっと、こら祐祉! もう! りっくん、解けて踏んじゃう前に結び直すのよ」

 祐祉のあしらうような態度に肩を竦めて、頬を少し膨らませた立腹の面持ちで見送る祐美。そんな育ての母に心配されることに、律はほんの少し嬉しさを胸に抱く。

「もう見送りするなってのに。いい歳して毎朝見送りされるっていうのはな……」

「そうかな? ボクは嬉しいけど」

 体格相応の大きな歩幅で足早に通学路を行く祐祉に、歩幅の小さな律は小走りについて歩く。

「祐祉兄ちゃん、今日バイトの日?」

「あぁ。でも、今のバイトはもうすぐ終わりだけど。最初から夏休みまでってことだったし。でも、夏休みの間のバイト先が見つからないのは誤算だったな……」

 御室家は母子家庭ではあったが、貧しい生活をしているわけではなかった。それは祐美が有名学習塾の講師としてそれなりの高給を得ているからというのもあったが、祐祉がアルバイトに精を出して家計に寄与しているからというのもあった。

「ボクもアルバイトしたいなぁ」

「バイトしても誰にも文句言われない歳になったら、バイト先探してやるよ」

「うんっ」

 隣同士であり、母親同士も年齢が近く、そして互いに母子家庭ということが二つの家庭を引き寄せたきっかけだった。

 律と祐祉を二人の母がそれぞれ助けあって面倒を見ていたこともあり、そんな環境で育った二人は本物の兄弟のようだ。母たちにとっても二人はどちらも我が子のようなものであったし、息子たちにとっても母は二人という認識だった。

 母二人、子二人。通学の足を速めながら夏空の下を行く息子たちが、子供であるうちは、確かにその図式であった。


 学力について、律の実母であるづるの要求は高いところにあった。ヒステリックに高得点を求めるようなものではなかったが、学年全体では先頭集団とは言わないまでも上位と呼べる順位を求めていた。律が学習塾に通うようになったのも、そんな千鶴の強い勧めからだ。

 市内にはいくつか学習塾があり、個人経営から全国規模の大手まで、大小は様々だ。その中で一際大きなものが、祐美が講師として勤務する有名進学塾だった。

 律の通う塾がそこに決まったのは必然以外のなにものでもなく、祐美の受け持ちとして入塾も滞りなかった。

 駅に近く、住宅街からもそれほど離れていない。そしてなにより、近隣のいくつかの学校と住宅街とのほぼ中間地点。そんな絶好の立地にあるビルのフロア二つに跨って、その塾はある。

 下のフロアは学力向上目的の学習塾として、上のフロアは受験に向けた進学塾として区別されていた。その下のフロアの一角、間仕切りされた一畳ほどの学習スペースで祐美と律は隣り合って座っていた。

「そろそろ時間ね。じゃ、ここまでにしましょう」

 夏の陽が沈みかけた頃、塾は一区切りの時間を迎えていた。他の学習スペースでも、塾生が一息く声や、教材を片づける音がし始めている。

「うん」

「塾では、はい、でしょ? 律君」

 幼少からそういった傾向があったが、律は実母である千鶴には歳不相応に礼儀正しく、逆に祐美には彼本来の子供っぽさで接していた。そんな彼の二面性にも似た気質を正そうと、祐美は塾内では講師と塾生としてきっちりと立場を隔てるようにしている。それでも、律は時々にこうして素の言葉が出てしまう癖が直らないでいた。

「あ、はーい」

「よろしい」

 素直な律の態度ににっこりと笑って返すと、祐美は席を立つ。その身を包むのは、朝に見せたタンクトップにジーンズというラフなものとは打って変わって、キッチリとしたライトグレーのパンツスーツだった。グラマーで身長もある祐美には、七分袖のジャケットとブーツカットのパンツという組み合わせも絵になる。彼女のその出で立ちは体の曲線と肉感を強調し、働く大人の女の色香がシルエットから放たれていた。

 祐美は、律の母である千鶴よりも二歳年下だ。たった二つの差だというのに、律の目には一回りも違うのではないかというほど祐美は若々しく感じる。その若々しさとは肉体的にもそうだが、一番の理由は精神的な部分によるものだ。

 千鶴も肉体的にはそう引けを取るものではないが、精神的には実年齢よりもずっと年輪を重ねたような落ち着きがある。悪く言えば、年寄り臭ささえある。それに対して、祐美はまるで今まさに青春を謳歌しているかのような溌剌さに溢れているのだ。

「祐美母さ……先生は今日は遅くなるんですか?」

 教材やノートを鞄に詰めながら、律は席を立った彼女を見上げて問いかける。

「明日は休みだから、今日のうちに片づけないといけない仕事もあるし……ちょっと遅くなるかな。それより、授業は終わったんだし、もういつも通りでいいのよ律君」

「祐美母さんもね」

「そうね、りっくん。ふふっ」

 実子にも等しい少年と笑い合いながら、祐美は机に広げていたバインダーを閉じて取り、小脇に抱える。と、そこでなにか思い出したように律に視線を落とした。

「そうだ、りっくん。悪いんだけど、帰ったらウチの二階に干してある洗濯物の取り込み頼めない? 祐祉に頼もうと思ったんだけど、バイトで遅くなるみたいなのよ」

「なんだか雨が降ってきそうな空だもんね……うん、いいよ」

 律が二つ返事で大きく頷くと、祐美は嬉しそうに微笑んで小動物を愛でるような優しい手付きで律の頭を撫でた。そしてジャケットのポケットを探り、兎のマスコットの提げられた鍵を取り出し、律に手渡す。

「ありがとう、助かるわぁ。はい、家の鍵ね。御礼は、今度の休みにりっくんの好きなチーズケーキ焼いてあげるから、それでね」

「ホント!? じゃあすぐ帰って洗濯物入れておくね!」

「もう暗いから、帰り道は車に気をつけてね」

 他の塾生たちとともに半ば一塊となって律は教室を出る。そのまま流れに乗るようにしてエレベーターに乗り込み、そこから教室の入口に視線を向けた。すると、教室の入口からこちらに微笑みを向け、小さく手を振って律を見送る祐美の姿があった。

 エレベーターのドアが閉まるその瞬間まで見送られた律は、塾の外に出ると一人、夜のとばりが降りた帰り道を急いだ。


「よかった、降る前に着いた……」

 御室宅の前に着いたとき、空は黒い雨雲が低く垂れ込めて今にも降り出しそうな気配だった。ブロンズの柵を開けて玄関に駆け寄ると、律は祐美から預かった鍵を制服のポケットから取り出し、それで鍵を開けて御室宅の中に入る。

 物心ついたときから出入りし、小さい頃に床につけた傷まで知っているような家だ。律は日が暮れて真っ暗な中でも照明のスイッチを迷うことなく入れ、二階に上がることができた。

 律がこうして我が家も同然に隣家の勝手を知るほど、鳴瀧と御室の両家族の付き合いは長く、そして親密だった。それは、律が生まれるより以前、千鶴が鳴瀧家へ嫁いできて隣人の祐美と出会ったことに端を発する。

 祐美は現在とは別の姓ではあったが、今現在も自宅としているそこに住んでいた。当時、祐美は夫と二歳になった祐祉との三人で暮らしていたが、その生活は祐祉が三歳になって間もなく、夫の浮気によって破綻する。同じ頃、臨月を迎えていた千鶴は親子ほども歳の離れた夫に先立たれ、身重で未亡人になったばかりだった。

 未亡人となってから一月ほどして、遺産の相続などの雑事を片づけた千鶴が産気づき、隣家の祐美に助けを求めたのが大きな転機となった。たった一人で出産に臨まなくてはならない千鶴につき添って励まし続け、律が生まれてからは、年下ではあるが子育てに一日の長があった祐美が母子の面倒を見た。それ以来、両家族は二家族で一家庭と言ってもいいほど親密な付き合いを続けてきている。特に律は、千鶴の多忙なときには御室の家で過ごす時間が長かったこともあり、二つの家を頻繁に出入りする両家族の間でも特別な存在だった。

「祐美母さんの部屋、っと」

 二階の一室が、律にとって育ての親と言える祐美の部屋だった。そこに入るのは初めてではなかったが、小さい頃に何度か入ったくらいしか記憶がない。この数年は覗いたことすらなかった。

 ──カチャ……

 慎重な手付きで静かにノブを回す。

(別に悪いことしに来たわけじゃないんだけど……)

 心の中で呟く。だが、忍び込むかのようなその気分が胸をドキドキと躍らせる。小さく喉を鳴らして生唾を飲むと、一気にドアを開けて室内に入った。

 瞬間、鼻腔一杯に広がる女の香り。ムワッと濃いその香気は、長い年月のうちに部屋そのものに染みついた祐美の体臭だった。

 若年で結婚して祐祉を生み、それからほんの数年で夫の不義が原因で離婚して以来、現在まで長く独り寝で過ごしてきた女の部屋だ。男の匂いがまったくしない、混ざりけなしの純粋なやもめの香りがその部屋には詰め込まれていた。

「あ……祐美母さんの、匂いだ……」

 スゥッと深く吸い込む。今までにこれほど女の匂いを意識したことはなかっただろう。嗅覚をくすぐる甘い香りに、とろんと脳が蕩けていくような快感を覚える。その場に立ち入った本来の理由も忘れ、律はしばし目を閉じて祐美の香気に酔い痴れた。

 ──パタッ、パタタッ、パタパタ……

 ふと、五感のうち嗅覚に全てを注いでいた少年の聴覚に入った小さな音。薄く開けた目に、部屋の入口から真っ直ぐ向かいにあるベランダ越しの空が見えた。そこにはチラチラと輝くようにして空から落ちるものがあった。

「あッ! 雨降ってきた!」

 ハッと自分がそこを訪れた理由を思い出し、律は手にしていた通学鞄をその場に投げ捨て、慌ててベランダの引き戸に駆け寄る。ガラス張りの引き戸の向こうには、四つの物干しハンガーに無数の衣類が下がっていた。少年は引き戸の鍵を開け大急ぎでベランダに出ると、雨が吹き込んで濡れる前にと物干しハンガーを物干し竿から外して抱え込み、室内に取り込んでベッドの上にそれをドサドサと落とした。

「ふぅ、もうチョットで濡らすところだった……あっ……」

 ベッドの上にハンガーごと落とした洗濯物。その一番上になった物干しハンガーは、その全ての洗濯ばさみがランジェリーを捕らえていた。

「これ、祐美母さんの……?」

 白、黒、赤、黄、青、ピンク、緑、紫……非常にカラフルで、一つとして同じデザインのものがなくファッショナブル、そして妖艶。薄暗い室内だというのに、まるでネオンのように鮮やかに映るそれらは、律の目を奪う。

(下着……)

 雨音が少しずつ強まる気配を感じさせる中、ゴクリとやけに大きく唾液をえんする音が律の耳の奥で聞こえた。

 恐る恐るといったようにそっと手を伸ばし、折り重なった下着の中から一枚を摘む。ツルツルとした手触りの、光沢のある白いショーツ。それを留めている洗濯ばさみを外し、手の中に小さく丸まったランジェリーをしげしげと見つめる。

「……なんだか、エッチな形」

 鼓動が速まり、鼻息が荒くなるのを自覚しながら、律は両手で下着を広げた。光沢を放つそれは、丸まった状態からは思いがけないほど大きく広がって、少年の眼前にその形を現す。

「これが、女の人の……」

 いつも包み込んでいるであろう尻の形を想像させるショーツの丸み。そして、股間部の膨らみ。その股間部に指を当ててみる。そこに当たるであろう秘唇の形を想像して、指が縦に擦る動きをした。

「こ、ここに、女の人の、アソコが……」

 シュッシュッとショーツを擦る指が熱っぽく、そして強く動く。

「っはぁ……はぁ……っ!」

 乱れ始める呼吸。股間部分に女性器を投影して指で擦り立てていたそれを、にわかに顔一杯に広げるようにして押し当て、その匂いを鼻を鳴らして嗅ぐ。洗剤の清々しい香りの奥に、微かな女の残り香。鼻の奥へと吸い込むほどに、それはまるで脳内麻薬を刺激するかのように律を昂ぶらせた。

「祐美、母さんの、ニオイ……?」

 下着そのものへの興奮が、ふと祐美の存在を繊維に残った香りから感じて、ゾワゾワと言い知れない欲情に変わって噴き出した。

 モゾモゾと、股間の切ない疼きに膝を摺り合わせる。そして頭の表面が痺れるような興奮の赴くまま、匂いを嗅いでいるそれの、先ほどまで女陰をそこに投影して擦っていた部分を舌で舐め始めていた。

 頭の中で明確にイメージできる身近な異性。それを性欲の焚きつけにする背徳感。育ての母と慕いこそすれ、異性と捉えることのなかったはずの彼女が脳裏に浮かぶ。

「ふはっ、はッ、はぁッ、祐美母さんッ、あぁッ……!」

 熱っぽく口から湧き出す言葉。そしてズボンのベルトに手をかけ、じれったいようにガチャガチャと荒っぽく外すと、ファスナーを下ろしてホックを外し、ズボンを蹴るようにして脱ぎ捨てた。下ろしたズボンの中から白いブリーフが現れる。前部はピンとテントを張り、その頂点は湿って僅かにその内に包まれたものの色を透けさせていた。

(ごめん、祐美母さん……ボク、祐美母さんの部屋で悪いコトしようとしてる……)

 内心で部屋の主に詫びながらも、律の手は自らのブリーフを下ろそうと動く。しかしテントの支柱になっているものが下ろすことを妨げ、つっかえ棒のように引っかかる。その些細な抵抗を無視して少年の手が引っ張り下ろすと、つっかえ棒がプルンと投石機のアームのように飛び出した。

 小さいながら、律の控え目な性格とは反対に生意気そうに勃起した〝おちんちん〟。男根や肉棒などと、一人前に形容するにはかなり子供っぽいそれは、すべすべとしたミルク色の包皮に包まれ、巾着のように先端が窄まった姿を現す。それにショーツを被せ、律は育母の香りに包まれながら破廉恥な行為に耽った。


 終業のチャイムが鳴り、律は机の脇にかけられていた通学鞄を取って机の上に置く。

(……祐美母さん、気づかなかったのかな。よかった……)

 鞄を開けて、昨日そこに隠して自宅へ持って帰った祐美の下着のことを思い返す。今朝は、下着が一枚ないことに気づかれて叱られるのではないかと緊張しながら、御室家の前で見送りに出てきた祐美と顔を合わせた。しかし彼女はいつもと変わらぬ様子で、「昨日は洗濯物を取り込んでくれてありがとうね」と快活な笑みを見せてくれた。ほっと胸を撫で下ろした反動か、今この時間まですっかり昨日の悪戯のことを忘れていた都合のいい自分自身に少し呆れる。

(でも、どうしようあれ……やっぱり、ゴミに隠して捨てたほうがいいかな……)

 昨日も自室に帰ってから同じことを考えた。捨てるに捨てられず、勉強机の引き出しの奥に隠してきた祐美の下着。

 ショーツに小振りなペニスを包んで耽った自慰。ツルツルとして肌触りのいい生地に擦られる快感に、律は一度ならず数度、祐美の下着に精液を迸らせた。今朝には、少年の若さをそのまま凝縮したような青臭く粘り気の強い精液が乾いて、白い生地にハッキリと黄ばんだ染みができていた。捨てるか、洗ってからこっそり返すか、あるいはそのまま隠し持ち続けるか。律の気持ちは決まらないでいた。

 ──ピポッ、ピポッ、ピポッ

 下着の処置について考えを巡らせながら、教科書やノートを鞄に詰め込んでいると、ズボンのポケットの中で携帯電話がメールの着信を知らせる。

「だれだろ?」

 ポケットから携帯電話を取り出し、メールの差出人の名前を見た瞬間、律の心臓がやたら大きな音を立てて鼓動を打った。

『祐美母さん』

 ディスプレイに映し出されたその名前に、眩暈にも似た緊張が走る。ついに気づかれたのか。自分が下着を盗っていったのではないかと育ての母が疑いを持ったのではないか。メールの内容を確かめる以前に、頭に渦巻くネガティブな想像に少年は戦慄わなないていた。

(で、でも、祐美母さんは大したことない話でメール送ってくるし……)

 希望的な思考を頭の中に敷き詰めながら、震えが隠せない手に握った携帯電話を操作して恐る恐るメーラーを開く。

『りっくんへ』

 メールのタイトルはその一語と、ハートマークがコロコロと転がるように回っている絵文字が文末についているだけだった。

「いつもの祐美母さんだ」

 ほっと胸を撫で下ろしながら、メール本文を開く。と、そこには本文に先んじて添付されたファイル名とリンクが記されていた。

(添付ファイル……?)

 ザワザワと、異常なほどの胸騒ぎがした。一度は撫で下ろした胸が、それまで以上に激しく怯えて震える。表示されたファイルへのリンクにカーソルを運び、躊躇う指先で思いきってそれを押す。

 動画だった。見覚えのある光景。それは御室家の二階、祐美の寝室をベランダの高い位置から映していた。いや、寝室の中を撮っているというより、ベランダに干してある下着を撮っているといったアングルだ。

「あ、あぁ……」

 物干しハンガーの向こうで、寝室のドアが開く。そこに映っているのは彼が誰よりもよく知っている人間。鳴瀧律。自分自身だった。

 動画の中でもわかるほど、祐美の寝室の空気を深く吸って、その香気に酔っている自分の姿。律は体がワナワナと戦慄するのを感じた。小さい液晶画面の中には、自分が慌ててベランダに出てくる様子が映し出されている。そして、睫毛まで見えるほどカメラの間近に迫り、下着が干された物干しハンガーを取り込んで室内に戻っていく。動画を最後まで見るまでもない。その動画に映し出されるのは、祐美の寝室、祐美の下着で、自慰に耽る自分の姿だ。

(なんでこんな、カメラが……)

 顔が赤熱して、ドクドクと心臓の鼓動に合わせるかのように頭の中がくらりくらりと回り、酩酊にも似た感覚を少年に味わわせた。

 最後まで動画を再生することなく止めた律は、ハッと周囲のクラスメイトが自分の携帯電話を覗き見たりしていないことを確認し、一つ溜息を吐く。そして、鞄に滅茶苦茶に教科書とノートを詰め込むと、半ば走るようにして教室を飛び出し、最寄りのトイレの個室に飛び込んだ。

 個室の鍵をかけて、崩れるように便座に座り込む。収まることを知らない動悸に苛まれながら、しばらく息を整えるように胸を押さえて目を閉じていた。

「はあぁ……」

 ようやく落ち着きを取り戻したところで、改めて携帯電話を取り出してメールを開く。添付ファイルへのリンクの先に続く本文を目でなぞった。

『学校が終わったら、すぐに昨日の下着を持って家に来なさい』

 メールの題名とは違い、普段のメールとは違った硬い雰囲気で書かれた本文に、少年は身を強張らせる。

(ば、バレたんだ……やっぱり、怒ってる……)

 予測はしていたことだったが、祐美が憤っているという事実を文面とはいえ突きつけられると、少年は狼狽えた。とはいえ、相手は隣家の母。互いの家を気兼ねなく行き来する関係である以上、無視して引き籠もっても解決はしないだろう。それどころか、律の母である千鶴に報告されれば母二人に責められることになる。となれば、選択肢は一つしかなかった。


 鳴瀧邸の門はかんぬをかけていない状態で閉められていたが、玄関の鍵はしっかりとかけられていた。それは、彼の母が外出中であることを示していた。塾でもないのに帰宅してすぐにまた出かけるという行動を、日頃から厳格な母に追求されないで済むというだけで、律は精神的な余裕を得る。

 上からその屋根を見下ろすと、凹の字形をした邸宅。凹の字の底辺部分にあたる玄関から左右に伸びる廊下を左に駆け、障子を勢いよく開けて、律は自室に駆け込んだ。

 鞄を机に置くと同時に、引き出しを開けて奥に隠した祐美のショーツを取り出す。手の中にある精液の染みた女物の下着を握り締め、律はすぐさま部屋を出て隣家へと走る。

 数分とかからず御室家の玄関前に着いたとき、少年の気は重くなっていた。白い壁の、こぢんまりとした二階建ての住宅。鳴瀧邸に比べればずっと小さいその家が、まるでそそり立つ居城のようにすら感じられる。

(祐美母さん……許してくれるかな……)

 玄関のドアを前にして、普段はまったく気にかけないその扉のノブに手をかけあぐねる。そうして躊躇っては溜息を吐いてとしばし繰り返したあと、少年は思いきって半ば乱暴なほどの勢いでドアを開けた。

「……ッ!!

 押し入るかのように玄関を開けた少年を待ち構えていたのは、年甲斐もないふくれっ面で仁王立ちしている祐美の姿だった。

「ッ、あ、あの、ゆ、祐美母さん……」

 豊満な胸元も邪魔そうに腕組みした育ての母は、七部丈のぴっちりとしたタイトパンツに襟首の大きく開いたノースリーブという出で立ちで、足を肩幅に開いてそこに立っていた。

「えと、あの、あのね……」

「りっくん」

「は、はいッ」

「とりあえず中に入りなさい」

 腕組みしたままの祐美にそう促され、律は言われるがまま靴を脱いで御室家に上がる。いつになく強い口調の祐美にビクビクしながら、少年は家の中に上がるときっちりと靴を揃えた。

「私の部屋で話しましょう」

 いつもはきさくで饒舌な祐美が、言葉少なにそれだけ言い放つ。そして、さっさと階段を上がり始めると、律は慌ててその後を追いかけた。

 ──カチャ……

 昨日は律が開けた祐美の寝室のドア。今日は部屋の主自身の手でドアが開かれた。

(あれ……)

 少年が祐美に続いて寝室の中に入ると、心なしか昨日とはその部屋に満ちた香りが違って感じられた。どう違うのかとは言い表し難いものであったが、どこか湿っぽく、そして生々しく、肌に空気がまとわりつくかのような感触を覚える。

「そこに座りなさい」

「う、うん……」

 律にそう促してベッドに座らせると、隣母自身は化粧台の椅子を少年の正面に移動させて、そこに腰掛けた。そして、長くもムチィッとした丸みのある脚を組みながら、祐美はスッと手を律に向けて差し出した。

「昨日持っていったパンツ、渡しなさい」

 普段なら笑みの絶えない口元をへの字に噤んだ祐美は、怒気を帯びた低い声色でぴしゃりと言い放つ。そして、眉を吊り上げたきつい視線で律を見据えながら、手の平を少年に向けて差し出す。

 その、今まで見たことのない祐美の強い怒りの態度に、律は心底畏縮して小柄な体をさらに小さく縮こまらせていた。

(こんなに怖い祐美母さん見たことない……謝らなくちゃ、謝らなくちゃ……!)

 必死だった。心から謝って許しを乞わなければ、祐美との関係が絶えてしまう。律が生まれた瞬間からずっと傍にいた、もう一人の母を失ってしまう。目の前に聳え立つ喪失の恐怖に、律は肩を震わせた。

「ご、ごめん、なさッ、い……」

 緊張した喉に息が詰まって、謝る言葉も途切れ途切れになった。自分に向けて真っ直ぐ突き出された祐美の手に、律は制服のズボンのポケットから取り出した白い下着を震える手でそっと手渡した。

「メールと一緒に送ったやつ、見た?」

「……うん」

「最近、干してある私の下着がよくなくなるのよね」

 チクチクと肌に刺さるような、祐美の冷たい語調。彼女が言ったその言葉に、律はハッと顔を上げて口を開いた。

「ち、違うよッ!? ボクは下着泥棒なんかしてない! き、昨日のは……その……」

 二階に干してある洗濯物を盗るのに、御室家の不在になる時間帯をよく知っている自分が疑われても仕方ないのは理解できた。そして、昨日前科となることをやってしまっているのだから、言い訳にまったく説得力がないことも自覚している。

「……あの動画を撮ったビデオカメラね、下着泥棒がいるなら証拠を掴んでやろうと思って仕掛けておいたものなの」

 やはり説得力のない言葉は受け入れられなかったのか、律の言葉を聞き流して祐美は続けた。

「帰ってきてから撮れたものを確認したら……」

 言いながら、彼女は律から返還された自分の下着をピラリと両手で摘んで広げる。

「りっくんが〝あんなコト〟してるのが映ってるんだもの。この黄色いの、りっくんが出した精子のシミでしょ? 下着を〝キタナイモノ〟で汚して喜ぶなんて、変態のすることよ」

「え、あ、う……」

 ズキズキと、一言ごとに刺さる言葉を投げつける祐美に、股布に汚らしい黄ばみの広がったショーツを突きつけられ、律は赤面とともに口ごもった。下着を盗り、あまつさえ寝室で破廉恥な行為に耽ったことを咎められる。自分のした恥知らずな行為を改めて自覚させられ、それが彼女をいかに怒らせたかを思い知らされた。そして、いつ祐美に絶縁の言葉を聞かされるか。律はそれに怯えて涙ぐんですらいた。

「……ふッ……うふふッ! いつ来るかと思って待ってたら、りっくんてば、叱られると思って玄関の前でビクビクしてるんだもの。玄関の覗き穴からそれを見てたら可愛くて、ちょっと意地悪しちゃったの。ごめんね。怒ってないから、泣かないで?」

 それまでの冷たく突き放すような口調から、急にいつもの明るく柔らかい口調に戻っている育ての母に戸惑って、律は言葉が口から出ずにいた。ころころと笑う祐美に、しばらくきょとんとした自分の顔をどうしていいものかわからず、少年は呆けていた。

「でも、あのビデオがなくてもすぐバレちゃってたわよ、りっくん」

「えっ……どうして?」

 彼女のその言葉がきっかけとなって、律はやっとその表情を驚きのものへと変えることができ、そして言葉を出すことができた。

「これ、高級シルク製のお気に入りなの。ブラとセットだし、下だけなかったら気づくものね。それに、下着泥棒なら、たった一枚だけっていうのは欲がなさすぎだと思わない? そうすると、やっぱり昨日ここに来たりっくんを疑ってたと思うわよ?」

 その言葉に、少年はどのようにしていたとしてもおそらく自分はここにこうしていたのであろうことを悟り、どっと虚脱感を覚える。

「それにしてもりっくんったら、こぉんなにいーっぱい精子出して、おっきなシミつくっちゃってぇ……」

 広げたランジェリーの股布一帯を薄黄色く汚しているシミを、律にも見せるように掲げて祐美はにんまりと悪戯っぽく笑う。

「まだ〝シーシー〟の面倒も見てあげないとだめなような気分でいたけど、溜まった精子を一人でシコシコ抜くような歳になってたのねぇ……祐祉がゴミ箱一杯に丸めたティッシュを詰め込んでた頃も思ったけど、男の子の成長って女親としては複雑だわ」

 そうやってシミジミと、独り言にしては律にもハッキリと聞き取れる声量で呟きながら、祐美は少年の精液の染み込んだランジェリーを伸ばしては戻してを繰り返す。

「ご、ごめん、祐美母さん、ボク、洗うよそれ……」

 そうやって、自分の破廉恥な行為の痕跡を母の目がまじまじと見つめている。自らの恥を観察されるその居たたまれなさに、律は祐美が弄んでいるシルクのショーツを取ろうと手を伸ばす。

「うぅん、いいのよ」

 首を横に振ると、祐美は伸ばされてきた手からショーツをサッと遠ざけ、そして律が思いもかけない行動をしてみせた。

「んンー……」

 昨日律がここでしたように、股布を鼻に押し当ててそこに染みついた匂いを鼻を鳴らして嗅ぎ始めたのだ。

「ゆ、祐美母さん、なにしてるのッ!?

「ンッふぅ……パンツに染みついた、りっくんのセーシ……とってもイイ匂い」

 うっとりと、いつも快活に笑っている目を細め、眉尻をだらしなく下げて蕩けた眉目。律がこれまでに数々見てきた祐美の表情の中で、一度として見たことのない妖艶なかお。母親と塾の先生。少年が知っている彼女の二つの側面のどちらでもない。ただの女という、第三の貌。それを目撃した少年は胸を殴られたような激しい動悸に見舞われる。ドコドコと、大排気量二気筒エンジンの鼓動のように鳴る心臓。沸騰したような血が全身を激流のように巡り、年若い彼の股間に若さ相応の活力を漲らせていく。

「や、やめてよ、そんなの……」

「あらあら、どうしたのりっくん? そんな前屈みで」

 グングンと勃起するペニスとは反対に、律自身はどんどん前屈みになって、ベッドの縁に腰掛けながら半ば前屈するような格好になっていた。

「おちんちん、勃起、したんでしょ」

「あの、ボク、ごめんなさい……」

 股間を両手で押さえて、育ての母から視線を逸らして耳まで真っ赤に赤面する。その様子を見る祐美は、静かに椅子を立った。

「そんなの、全然恥ずかしいことでも悪いことでもないのよ? それに、りっくんみたいな若い子が欲情してくれるなんて、女として嬉しいわ」

 少し照れたように、にっこりと笑いながら祐美はベッドに腰掛けた律の膝下に手を入れ、前屈みになった彼をそのままゴロンと転がすように後ろに押し倒す。不意打ちでベッドに倒されながらも、律は反射的に我が身を起こそうとしていた。しかし、その華奢な体の上に、重々しく揺れる豊乳を備えた女体が重なり、身動きを封じ込める。

「ゆ、祐美母さんッ……!?

「昨日、ここで私のパンツの匂いを嗅ぎながら……祐美母さん、祐美母さんって、私を想像しながらおちんちん弄ってくれてたのね……」

 少年の薄い胸板の上に、ずんぐりとした太いロケットを連想させる爆乳がのしかかる。ノーブラか、乳房の感触は少年の身に着けたタンクトップとワイシャツ越しにも生々しく伝わった。

(ち、乳首……)

 胸板をツンツンと刺激する二点を感じ、律は生唾を飲んだ。女の体をこれほどまでに感じたことはない。彼が初めて密着する、異性の感触だった。男友達とじゃれ合ったときの骨と筋肉が当たるような硬い感触とは違う、包み込まれるような、柔らかく沈み込んでしまいそうな熟れた女の肉感。

「ごめん、なさい……ボク、祐美、母さんで……」

 育ての母に抱く、実母と向けるものと同等の愛情。その愛情を向ける母に劣情を催す不道徳への罪悪感と、性に旺盛な少年らしい即物的な欲求。たとえ相手が母でも抗えない、その欲求を示す股間の勃起。そんな不埒な自分を母に詫びる。

「オムツも替えてあげたし、トイレでおしっこの世話もしてあげたわねぇ……あの、指くらいに小っちゃかったおちんちんが、こんなに成長して……」

「あ、あぅぅっ!?

 股間をスルスルと撫でる感触に、律が喉を反らせて悶える。祐美の手が、我が子をあやすようにピンと張ったテントの頂点を撫でていた。

「おちんちん、苦しいでしょ? ズボン、脱いじゃう?」

「う、うぅっ……で、でも……こんなの……祐美母さんは、母さん、だから……」

 恍惚と苦悶、そして苦悩が少年の細面に浮かび、視線がフラフラと泳ぐ。

「イヤ?」

「そうじゃなくて……そうじゃないけど……悪いこと、でしょ……?」

「祐美母さんは、実の子同然のりっくんがとっても愛しいの。そのりっくんが、私を想いながら一人エッチしてるのが可哀想で仕方なくて……だから、本物の私が、りっくんにしてあげたい。子供になにかをしてあげたいって思うのは、母親の本能だもの」

 祐美の視線が、虹彩を観察できるほど極近い距離から律を見つめる。母性の滲む優しい眼差しの中に、潤んだ輝きが浮かぶ。その輝きに垣間見えるのは愛慾。母性愛と痴情とが深く混ざり合った蠱惑の色が、律の目に映る。

「それとも私、子供だと思ってるりっくんを誘惑して困らせる、悪いママかしら? でも、りっくんさえ許してくれれば、悪いママじゃなくなれるの……」

 どこか甘さの漂う隣母の吐息が、少年の鼻腔と鼓膜をくすぐる。その吐息とともに紡ぎ出されてくる免罪符は、彼女と少年の双方に有効なものであった。

「こんな祐美母さんだけど、許してくれる?」

「……う……う、ん」

「ありがとう、りっくん」

 柔らかく、熱を帯びた唇が少年の唇に押しつけられていた。どうしていいかわからずにただそれを受け入れている彼の唇を割って、女の舌が少年の口腔に入り込む。

「んッ、んぅッ!?

 にゅるりと、ぬめったものが自分の舌に絡みつき、律はその溶け合うような感触にゾクリとした官能と、心臓が飛び出すような驚愕を覚える。途端に強張る少年の細身。ガチガチに硬直した少年の肩を祐美の手が抱いて、子供をあやすように撫で、その緊張を解きほぐす。

(これ、キス? キスだ、キスされてる、祐美母さんに……!)

 初めてのキスに全神経を奪われていた。目を見開き、焦点を合わせることもできない至近距離にある祐美の顔をただただ見つめ、どうしていいかまったくわからず、置き場のない手をワナワナと震わせた。

 ちゅく、ちゅる、と二つの舌が絡み、唾液を混ぜ合う音が続く。しばらくして、口吻を貪っていた祐美の唇が離れる。彼女も律も、唇の周りをヌラヌラと唾液に濡らしながら、再び視線を絡ませた。

「りっくん、キスは?」

「初めて……だった……」

「ありがと」

 もう一度軽く唇を啄んで、祐美はその肉感を砲弾型の豊乳や、はち切れんばかりの臀部に表す女体を少年から離した。大人の濃密なキスですでに半ば骨抜きといったような律は、離れゆく育ての母をただ黙って目で追う。

 少年の実母にも等しくその成長を見てきた女は、ベッドの傍に降りて立つと、着衣に手をかけた。ほとんど衣擦れの音もなく、ノースリーブとタイトなパンツは女体から剥がされ、最後に残ったスキャンティーも床に投げ捨てられる。

「祐美母さん……」

 子供の頃には、一緒に風呂に入るのも当たり前だった。その頃のことは朧気になりつつはあるが今でも覚えている。その記憶の中の、二十代半ば頃の祐美の肢体が律の脳裏に浮かんでいた。

「ちっとも変わってないよ……昔、一緒にお風呂に入ってた頃と全然変わってない」 

 張り艶の衰えをまるで見せない肌は、健康的な血色を見せる。少年の目に晒された乳房は目を見張る大きさで、半分に切ったラグビーボールを連想させるずんぐりとした紡錘形をしていた。

「一応、女としていろいろ頑張ってるから、そのお陰ね」

 足首などは細く、必要のない部分はよく引き締まって、胸や尻、太腿といったセックスアピールを醸し出す部分は肉感的に張り出してメリハリがあった。その成熟した女体は、軽やかな短髪と比較的長身なことも手伝って、形容するのにカッコイイというのが最も適している。臀部は特によく脂が乗って丸く、大きい。経産婦らしいどっしりとして安産を約束されたような骨盤に支えられた尻は、ウエストのくびれとの対比によって実際以上に大きく見えた。しかし、その魅惑の大きさながら、尻肉が垂れ下がることもなくキュッと吊り上がって形良く、ムッチリと張りを見せる太腿とのまろやかな曲線は、卑猥と言うよりも健康的だった。

 どこか見ていて安心する、母親らしい優しい曲面で形作られた祐美の肢体。母親でありつつ、魅力を欠くことなく隅々まで女を磨いたと言っていい体は、少年の目にも類い希な美体であることがわかった。

「りっくんは……昔とは全然違うわね。そう……ちょっと大人っぽくなったかな」

 ベッドに膝から上がり、着衣のままの律の横に腰を落とす。そして、少年のベルトを外し、制服のズボンを脱がせる。小振りだが、立派にテントを張った白いブリーフが姿を見せ、祐美は恍惚の面持ちで目を細めた。

 ブリーフの上から手を這わせる。小さいなりにも、精一杯、目一杯硬く勃起したものが、その内で熱く火照っていた。

「可愛いおちんちん……」

 僅かに溜息を混ぜた言葉を漏らし、祐美は律の股間に覆い被さるように顔を近づける。ふっと香り立つ男の匂い。少年のそこだけは、彼が男であることを強調するかのように牡の匂いを放っていた。

 ──ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ……

「あぁぅぁッ!? 祐美母さんなにっ、なにしてるのッ!?

 律にとっては、彼女のしていることの意味が理解できなかった。ブリーフの上から、自分のペニスに吸いついている。綿の生地を隔てたところで、祐美の唇がペニスを挟みキュッキュッとしごくように動く。舌がうねうねと蠢き、それに合わせてブリーフに唾液が染み込み、徐々に濡れた感触がペニスに伝わり始める。玉袋は手に弄ばれ、内包した玉を指先がたぷたぷと揺らすように刺激して、律の性器全体が祐美によって歓喜を呼び込まれていた。

「あぁっ、あぁッ、あァッ!?

 ビクッビクッと腰が波打つように痙攣する。その瞬間、祐美の口がブリーフ越しのペニスから離れた。

「まだイっちゃダメよ?」

「ア、は、うっく……」

 昂ぶったものがまた遠ざかり、律は我慢を強いられるもどかしさと射精の欲求の板挟みとなって、ベッドの上で悶える。唾液を吸ってペニスの姿を透けさせるブリーフが気化熱で冷やされて、昂ぶりをいくらかではあるが鎮めてくれた。

 その唾液に濡れたブリーフに、祐美の手がかかる。咄嗟に脱がされると察して、律は拳を握って羞恥の予感に緊張を走らせた。赤ん坊の頃にはオムツ替えで同じような格好で見られたであろうペニスを、今この歳になって再びもう一人の母の前に晒す。それも今度は、その母に欲情してカチカチに勃起した恥ずかしい状態で。

 祐美は身を固くしているが抵抗するでもない律からそれを脱がせると、少年の脚の間に寝そべるように身を入れた。

「大人っぽくなったけど、ここはまだまるっきり子供のまんまね」

 下腹部は無毛で、亀頭にすっぽりと包皮を被った生白いペニスは実際の歳以上に子供っぽい。だがそれは控え目なサイズにもかかわらず、子供が大人を真似して背伸びをしているかのように、無毛の下腹部に包茎の先端をくっつけんばかりに元気よく反り返っていた。

「うふふ、元気いっぱいね」

 優しく微笑みながら、祐美は色白なペニスを摘む。昂ぶりが引いたとはいっても、未だ敏感なそれは、彼女の指に触れられてビクンと震える。

「今度は、イキたくなったら我慢しないでいいからね」

 摘んだそれの先端を自らに向けさせ、彼女は包皮にくるまれた可愛らしいペニスを口腔にすっぽりと入れたうえで、パクンと咥えた。

「アッ!? うあぁッ!?

 ペニスが温もりに包まれたその心地よさに、律は四肢をむずがる子供のように不規則に動かし、ベッドにかけられた薄いブランケットを大きく乱した。

「んっ、んむっ……」

 首を捻るようにして、頬張ったままペニスを隅々まで丹念に舐め回す。祐美自身が驚くほど、多量に唾液が分泌されて口内に溜まっていく。

 十数年ぶりに愛し合う相手が律になるとは思ってもみなかった。きっかけがあったからとはいえ、実の子供同然に接してきた少年を誘惑した自分に少なからず驚きもあった。知ることとなってしまった少年の自慰と、その欲望の捌け口となっている自分。律に対する愛情が、思いがけず愛慾に形を変えてしまったことにはいとくの思いは捨てきれない。しかし、実子に等しい子の成長途上のペニスを口にしているその言い知れぬ昂揚感は、三十路の女体を激しく煮え返らせた。それは、ビデオが捉えた律の自慰姿をその目にしたときと同じ、いやそれ以上に激しい発情。男を迎えずに久しい膣が疼き、肉汁がヌルヌルと秘肉の合わせ目から垂れる。

 溜まった唾液の中でペニスを泳がせるように口戯を施し、手でその付け根にぶら下がった玉をふにふにと揉む。舌触りもスベスベとした少年ペニスの、牡臭さのまだ薄い味わいにトキメキにも酷似した興奮を催しながら、祐美は自らの股間にも手をやる。その手の指は、肉汁が溢れて尻と太腿の境目辺りを伝って流れ落ちるほど濡れた淫唇に埋められて、クチュクチュと音を立ててそこを慰める。

「ほぅうッ、ほふぅ……!」

 華奢な細身を捩り、閉じるのを忘れたような半開きの口から、律は溜息と歓喜が混在した声を漏らす。ねっとりとした温い液体の中で、ペニスが溶かされているような感覚。表面をぬるぬると動き回る舌の、少しざらついた感触が生む身悶えを抑えられないその快感。少年はベッドの上で溺れているかのように体をくねらせる。

「あぅふッ!? んあぁぁンッ!」

 その体に電気が流れたように、律が大きく仰け反った。少年がそれまでに体感したことのない、鮮烈な快感が襲う。勃起したものの内側に祐美の舌が入ってきたのかと錯覚するようなそれは、包皮の中へ舌が入り込んだ刺激だった。

 皮を被った包茎亀頭へと、窄まった包皮の先から舌を送り込まれる。ツルツルとした亀頭の表面にこびりついて、舌先に異物感を与えるものを拭うように、祐美は念入りに舌を動かす。それは、律の最も敏感な部分を痛烈に責めることでもあった。

 包茎の僅かな空間に割り込んだ舌は、包皮の中でねろねろと亀頭を軸に円を描くように回転する。唾液のぬめりを伴いつつ、ザラザラと舌の表面が亀頭を摩擦する刺激は、初めて亀頭に直接に加えられる者としてはあまりに強烈だった。律はビリビリと痺れるような、ペニスから脳天へ突き抜ける快感に目を白黒させた。

 ──ぴゅっ! ぴゅるッ! ぴゅるッ! ぴゅくっ、ぴゅくっ、ぴゅくっ……!

「うッ! うあぁッ!? 祐美母さんッ、母さぁんッ、ボク出るッ、出ッ……!!

 彼が射精してしまうことを知覚して声に出すより早く、精液は溢れていた。四肢を突っ張らせ、腰だけベッドから浮かせるようにビクンビクンと腰を痙攣させる。

「ン──ッ! ン──ッ!」

 唇を噛んで、眉間に皺を刻み、喉から絞り出すような嬌声を漏らす。そのがり声に合わせ、小さい陰茎が健気なほどにしゃくり上げて粘り着く白液を漏らす。

「ンふっ、ん、んふン……」

 射精というには噴き出すという感はなく、まさしく漏らしたといったようにドロドロと鈴口から湧き出す精液。それを、包皮の中を舌で掃除しながら祐美は驚いた様子もなく受け止め、時折ゴクンと喉を鳴らして嚥下した。

 小さなペニスのサイズに見合わず夥しく湧き出るスペルマは、体温よりもずっと熱く、祐美が舌の上で転がすように愛でるとチュルンと舌から逃げるかのようにぬめる。新鮮さを感じさせる濃厚な栗の花の香りと、ところてんに僅かに苦みとしょっぱさを混ぜ込んだような味が舌を刺激する。単純に味でいえば美味の範疇からはおよそ懸け離れたものだが、可愛い我が子のものと思えばそれは無上の甘露となって、祐美に法悦を味わわせる。

「あぁぁ、はあぁっ、ボク、祐美母さん、ボク……ッ」

 神経を直接舐められているような刺激と、自分でもまったくコントロールできない射精に、律は怯えたように涙ぐんで声を詰まらせる。

 しゃくり上げが収まったペニスに仕上げをするように、祐美は口内で全体を舐め上げる。さらに、尿道に残された精液まで余すことなく吸い取ってから、彼女はやっと口を離した。

「……ッちゅ。ごめんねりっくん、痛かった?」

「う、うぅん……痛くない……気持ちよくって、怖いくらいで、なんだかわかんなくなっちゃって……ごめん祐美母さん、ボク、出ちゃった……」

 自分の手以外で初めて射精した快感に虚脱してベッドに全身を沈めたまま、律は申し訳なさそうに潤んだ瞳で祐美を見つめる。そんな様子に祐美は体を起こし、子供の横に添い寝する母のように隣に身を寄せた。そして、律の頭を豊かな乳房に抱き寄せ、髪を優しく撫でた。

「いいのよ、気持ちよかったんでしょ? 祐美母さん、りっくんが出してくれて嬉しいわ。だから気にしないで、ね?」

 祐美がそう問いかけると、律は黙って小さく頷く。育母は彼に優しく笑いかけて頷き返す。それから、ふと自らの頬に手を当てて、自分が頬張っていた包茎を見やって少し考えるようにして口を開く。

「……でもちょっと早漏すぎるかしら……りっくんは皮を被ってるし、敏感すぎるのかも……りっくん、おちんちんの皮、全部剥いてみたことはある?」

「え……全部、剥けるの……? でも、皮って剥けたら痛いんじゃないの……?」

 彼女が言ったことに、少年は少し顔を強張らせて首を傾げる。そして、祐美の口の中で散々舐め回されて、唾液でヌラヌラと室内灯の明かりにテカっている自分の性器を見やったあと、自らを抱く擬母に不安げな瞳を向けた。

 古風な千鶴が手ずから性教育するとは思えない。それは自分自身にも数多思い当たる、女親が男児に教えてやれることなどいくつもないという母子家庭の苦悩。できることなら、実子である祐祉が悩んでいたであろう頃に自ら教えてやりたかったこと。子供の無知を手ずから補ってやれるという母性の喜びと、疼き。祐美は、手を再び律の下半身に伸ばした。

「ほら、ここの少し段になってるところ。ここまで剥けるのよ、知らない?」

 指先で少年の包茎をなぞり、直接その仕組みを教える。

「うぅん……」

 申し訳なさそうな、恥ずかしそうな、複雑な表情で律は答えながら視線を逸らした。

「性教育でもそういうところまで教えないのねぇ……あのね、りっくんのおちんちんは、ホーケーっていって、先っぽに皮を被ってるおちんちんなのよ」

 言うと、祐美は勃起を維持している若々しい包茎を摘んで垂直に立てる。

「全部剥いちゃおうか」

 にっこりと明るく、しかし淫猥な色気を帯びた笑みで言い、彼女はペニスを摘んだ指を軽く上下に動かしてしごいた。

「えぇッ!? むっ、剥いちゃうの……?」

 自らの性器をやんわりと刺激する令堂の指と顔を見比べ、少年は戸惑いと怯えの色を見せながら問う。

「さっき、この皮の中に舌を入れたのわかる?」

「え……うん……わかる、かも……?」

「舌を入れられるくらいなんだから、剥いても全然平気よ。痛くもないはずだから、祐美母さんに任せて、ね」

 小さな子供に接するように律にそう言って聞かせると、祐美は摘んだ指をゆっくりと包皮を引き下ろすように動かし始める。

「ほら、先っぽが見えた。ここまで剥いたことある?」

「う、うん、これくらいまでは前に少し……怖くなってすぐやめたけど……」

「じゃあ、ここからは未知の領域ね」

 祐美が艶美な笑みを湛えながら焦らすようにゆっくり動かしていく。その指が動くにつれて、少しずつ亀頭の露出面積が広がっていく。

(ほ、本当に剥けるんだ……祐美母さんに、恥ずかしいチンチン剥かれちゃう……)

 祐美の手ほどきによって、自身の恥部が未知の姿を見せようとしている。擬似の母に手ずからペニスの包皮を剥かれるという倒錯に、律は見開いた目を爛々と輝かせるほどに興奮していた。そして、本能的にそれが自分を子供から大人にする儀式のようなものだと感じ、胸がドクンドクンと高鳴る。

 祐美のペニスを摘んだ指は、さらに包皮を引き下ろし、亀頭が半分ほど露出する。可憐なピンク色に艶光り、嗅覚をツンと刺激する匂いを放つそれは、少年が初めて見る自分のペニスの顔だった。

「う、うぁっ……む、剥けたぁ……ッ」

「まだよ? もう半分剥けるからね」

 ゆるゆるとしたペースで少しずつ剥かれていく包茎。それは最も径の太い亀頭の端に差しかかり、崖を滑り落ちるようにツルンとカリの裏側まで一気に剥けきる。

 ──むりゅんッ

「う、うぁあぁ……ッ!?

「ほぅら全部剥けた。これが本当の〝おち○ぽ〟よ」

 ムッと熱気と臭気を放ち、張り詰めた亀頭が剥き出された。律自身、初めて見るその姿に目を見開く。

「これからは、自分で剥いて、お風呂に入ったときちゃんと洗うのよ? 汚いのが溜まっちゃうからね。まぁ、祐美母さんがそのたびに洗ってあげてもいいけど……?」

 小さく笑ってツンツンとペニスの裏筋を指先でつつき、祐美は少年の羞恥を煽る。

「ちゃ、ちゃんと洗うから、大丈夫……」

 本気か冗談か読み取りづらい祐美の言葉に少年はドギマギと答えながらも、その意識は初めて外気に触れたペニスの感覚に引かれる。そこは空気の流れすら感じられるほど敏感で、窮屈さから解き放たれた清々しいほどの解放感があった。

「この剥けたおち○ぽをね、こうやって……皮を戻して、また剥いて……」

 一度剥ききった包皮を戻して亀頭に被せる。そしてまた亀頭を露出させ、繰り返すその動きで一皮剥けたペニスに新しい快感を教えていく。

「あっ、あぁ、あぅンッ……」

 新鮮な快感の味に、少年はうっとりと身を任せる。敏感な剥きたて亀頭が包皮と外気に交互に触れる、これまでに感じたことのない刺激が心地よい。包皮が剥けたせいか、快感が鮮明になったような感覚は、性欲までも鮮明にさせていくようだった。

「ね。気持ちいいでしょ?」

「うん、我慢できなくなりそう……」

「いいわよ、イキそうになったら我慢しないでイッちゃいなさいね」

 まるで、新しいことにチャレンジする幼子の成長を見守るように微笑みながら、少年の頭を自らの胸の谷間に埋めるように抱き、自由な片手の指でせっせと律のペニスをしごく。ゆっくり剥いて被せてを繰り返していた動きは加速度的に速まり、繰り返される動きの境を目では捉えきれなくなってくる。

 剥け出る亀頭の色が、可愛らしい桃色から徐々にスモモのような赤みの濃い色合いになる。律の細腰が時折宙を穿つように突き上げられ、その昂揚を示した。

「あぅ、ッうぅ、ゆ、祐美母さぁんッ、ボク、また、出ちゃうぅ……!」

「はいはい、いっぱい出してねー」

 楽しげな笑顔で言う祐美の手が加速し、同時に律が感じる刺激も一気に増える。

(気持ちいいィ……ッ! 一人じゃないエッチってこんなに気持ちいいんだ……!)

 しなやかで張りのある指が、軽やかなスナップを利かせた手の動きに合わせて亀頭に被っては剥ける包皮を動かしつつ、同時に強張った肉の芯をしごく。カリ溝に指が作る輪が引っかかっては乗り越えるたび、律が肩を震わせるほどの快感が巻き起こる。自慰すら経験僅かな少年は、その刺激的な官能に溺れていた。どこに出ても美人という評価を得るだろう育ての母。未熟なペニスをその彼女がしごき、慈愛の表情を浮かべながら悶える自分を見つめている。羞恥とともに歓喜を覚え、律は湧き上がるそれに突き動かされるように腰を大きく宙に持ち上げた。

 ──どぴゅるッ、どぴゅるッ、びゅッ、びゅッ、びゅぅッ!

「あッ!! あはぁあぁぁッ!!

 包皮から剥け出てはまた隠れてを繰り返す亀頭の先から、とろみをつけた牛乳を思わせる精液が緩急をつけて噴き出す。

「アハッ、出た出た。凄い勢いよりっくん」

 しゃくり上げるペニスに、その射精を加速させるように速いしごきを入れる。指にしごかれながらビクビクと跳ねるペニス。射精中も構わずしごき続けているために、ザーメンが無秩序に飛び散る。それは、祐美の手や少年自身の下腹部、身に着けたワイシャツまでも汚していった。

「凄いわりっくん、二回目なのにこんなにたくさん!」

 ひとしきりの射精が収まり、祐美の手がスローダウンする。射精の余韻に時折身を震わせながら肩で息する少年に、育ての母は淫靡に笑いかける。そして、精液にまみれ、指と指の間に糸を引かせている手を口元に移す。

 ──ぢゅるっ……れろぉっ……チュパッ、チュパッ、ぢゅる、ずるぅッ

 指の股に橋を架ける精液の太い糸を啜り、指を咥えて音を立てながら綺麗にザーメンを舐め取る。親指から小指まで、一本ずつ丹念丁寧に舐めながら、その視線は真っ直ぐに実子よりも年下の隣人の息子へ向けられていた。

(……あぁ、あんなエッチな顔で、ボクの出したヤツを舐めてる……)

 少年が知るはずもない擬似母の表情。それは女の貌。上気した顔に浮かぶ淡い赤み。指を咥える唇は窄まり、その指をきつく吸う。上目遣いの瞳はぬめるような潤みを見せ、絡んだ視線が少年に目を逸らすことも許さなかった。

「ッふぅ……りっくんのザーメン、ねばねばぬるぬるで美味しい……」

 精液臭をたっぷりと帯びた吐息を一つ吐き、ゾクリと身震いしつつ祐美は感嘆したように声を漏らす。舌に、歯茎に、喉に、ねろりと絡みつく可愛い子供のスペルマ。舐め取り、舌触りを楽しみながら味わい、そして嚥下するたびに体の内から沸き立つ淫欲。忘れつつあった欲求が、痛いほどの乳首の尖りや、膣肉から滲み出す多量の肉汁となって現れ、祐美に自身が女であることを思い知らせる。

 恍惚のていで手に付着した精液の全てを舐め取った女は、ずっと胸の谷間に抱いていた律の頭を、寝かしつけるように枕に預ける。そして滑り降りるかのように、少年に寄り添わせている女体を彼の下半身に向けてずらしていく。顔が律の下腹部にくるまで体をずらすと、先ほどまで自らの指に絡みついた精液を舐め取っていた口を、今度は少年の下腹部に添わせた。恥毛も薄いそこに飛んだ精液を、大きく広げた舌で舐め、綺麗に拭っていく。

「あっ、あぁぁ……ッ」

 ──ゾクゾクゾク……

 一舐め受けただけで、律は腰を波打たせた。こそばゆい快感が背筋を走り、射精を終えて間もないペニスがビンビンと反応する。一度全て剥かれて剥けやすくなったのか、可愛らしい包茎は自らの勃起力だけで三分の一程度まで亀頭を剥き出していた。

「……りっくんはぁ、このおち○ぽのもっと他の使い方、知ってる?」

 一舐めするたびに跳ねるペニスを避けて、下腹部だけを舐め回す育母。彼女から出たその言葉に、律は一瞬面食らいながらも答えを考える。

「んと……女の人の、……に、入れる……?」

 律はもごもごと肝心な部分の名前を濁らせ、学校の性教育で必要最低限だけ吹き込まれたその使い方を、母の質問への答えにした。

「うん、そうね。勃起したおち○ぽを、おま○こに入れて、セックスするの」

 おま○こ、セックス、と祐美が率直に口に出した単語に、律のほうが赤面してしまう。いつも塾で勉強を教えているときのような教育者の口振りで、祐美は律に本物の性を示す。

「学校で性教育の勉強したでしょうけど、全然わからないでしょう? 〝本物〟がどうなってて、どうすればいいのか」

 返答するでもなく口ごもって視線を彷徨わせている少年に、祐美は小さく苦笑する。そして彼女は、仰向けになっている律をよじ登るようにして体を重ねたあと、少年の細い太腿の上に跨った。

「学校じゃ教えてくれないこと、私が全部教えてあげる。セックスも、もっとずっと気持ちいいことも全部。だから祐美母さんと、初めてのセックスしましょ?」

「祐美母さんと……」

 彼女が口にした言葉を咀嚼するその脳裏で、昨日少年が夢想した情景と、今目の前にある育母の生身とが重なっていた。

 彼の太腿よりも一回り太く、張りのある太腿。その腿から感じる彼女の重み。火照った内股の熱が密着した部分から伝わり、最も熱い両脚の付け根から溢れる汁気を感じさせた。幅広な腰回りから、キュゥッと砂時計のようにくびれたウエスト、そして胸から二つ突き出た砲弾型の爆乳。その先端が、彼女の呼吸に合わせてゆっくりと上下する。瑞々しい桜色のにゅううんの先で、人差し指の先ほどの乳首がピンと斜め上に向かってそそりち、彼女の昂ぶりを表していた。

「ボクの、初めて……」

「そう。りっくんの初めて……童貞、祐美母さんにくれない? 祐美母さんを、りっくんの最初の女にしてほしいの……ダメ?」

「う、うぅん、ダメとかじゃなくて……その、せ、セックス、は、わかるけど……細かいところが……」

 悲しそうに眉尻を下げた祐美の言葉を慌てて否定しながらも、律の声は語尾になるにつれて消え入るように小さくなっていった。

「大丈夫。言ったでしょ? 祐美母さんが全部教えてあげる。それでりっくんは気持ちよくなってくれればいいの。それが、祐美母さんの一番嬉しいことなのよ」

 律の言葉を、消極的ながらも応諾するものと捉えて、祐美は懸想の面持ちで垂れ気味の目尻をより一層下げる。そして、少年に跨ったまま腿の上から腰、腹、そして胸の上へと、大きな尻を振り振り律の顔面に向かってにじり寄った。

「じゃあ、一番大事なところから教えてあげる。ここ、なんて言うかわかる?」

 少年の胸を跨いで膝立ちし、両脚の付け根に手を這わせる。綺麗な逆三角形に短く刈り込まれた陰毛。そこよりさらに下部にある肉の亀裂を、両手の指でくぱぁと大きく広げて見せた。

 そこは、陰毛が刈り込まれているがために、複雑な構造の細部まではっきりと見て取れる。彼女自身の指で左右に広げられ、熟れて肉厚なわりに色素の薄い陰唇が、羽を広げた蝶のように開いていた。その陰唇のつがいとなっている部分を包皮としたクリトリスが、恥ずかしげにサーモンピンクの顔を覗かせていた。

「……う、ぁ、ぅ」

 その部位は、ただ性教育の知識として少年の頭にあったものとはあまりに違った。抽象的な性器図からは感じることのできない熱と匂いを伴い、汗を掻いたようにしっとりと湿っている。窪みのような小さな穴と、柔肉が窄まったような穴が縦に並び、滴るほどに汁を分泌するその姿は、少年なりにも持つ本能的な欲求を揺さぶった。

「どう? わからない?」

 クイと、腰を突き出すようにして律の鼻先に股間を突きつける。大人の余裕のようなものを醸し出した、挑発的な仕草。だが内心、恥知らずに肉汁を溢れさせる女陰を、我が子とも思う少年の視線に視姦されることに変態的な興奮を催していた。劣情とともに、トロリと湧き出た女の蜜が肉襞を伝い、滴となったそれは律の頬に滴り落ちた。

「……おっ、おま○、こ……」

「そう。おま○こね。それじゃ、おま○このどこにおちんちんを入れるかわかる? 指差してみて?」

 祐美が自らの指で広げて曝け出す女陰から目を逸らさず、黙って頷く少年。人差し指を伸ばし、広げられた痴裂の中心をそっと指す。

「こ、ここ……?」

 自信なさげに膣口を指し当て、答案の正否を上目遣いに育母を見上げて問う。

「正解、そこが膣口。おちんちんを挿入する穴よ。ここにりっくんのおちんちんを入れて、祐美母さんとセックスするのよ」

 垂れ目も柔和な顔に優しく笑みを浮かべて、祐美は律の腰の上へと跨り直す。少年が指差していた女穴の真下で、亀頭を僅かに剥き出した小振りなペニスが、鈴口に我慢汁を湛えていきり勃っていた。

「うふふ、元気ねぇ。りっくんは控え目で大人しいのに、おちんちんは凄く生意気そうに自己主張してるわ」

 体の一部とは思えないほど熱く、コンクリートすら穿ちそうなほど硬く勃起した少年のペニスに手を添える。そしてその穂先を、自らの穴の入口に向けて位置を合わせた。我が子も同然に面倒を見てきた少年の、男である証が自らの女である証に向けられている。

 昨晩、律が自分の下着で自慰をしている姿をビデオの中に見て以来、劣情と愛情が混ざって沸々と煮立ち続けていた心に、ふと思い出したように背徳感が過ぎった。自分を思って、自慰に耽る子。その姿に、許されるなら直接自分がしてあげたい、一人でするくらいなら全部自分が面倒を見てあげたいと、強烈な母性本能に突き動かされた結果が今ここにある。実の息子より年下の隣家の少年と、母性愛に端を発したとはいえ姦淫の関係を結ぼうとしている。実母ではないとはいえ、生まれたときから接し、実子とともに兄弟同然に育ててきた少年。愛情の延長線上にある行為とはいえ、その彼と結ぶ肉体関係が背徳的であることはわかっていた。

 少年の実母にして隣人、母同士という共通点を持った友人。そんな千鶴に心の中で詫びながらも、止められない母性愛と、それを根源として異常に煮え立つ愛慾。それらが、過ぎった背徳感を興奮のスパイスに転化し、祐美に律との交合をけしかける。

「いい? いいわよね? 入れちゃう、入れちゃうわ、りっくんの可愛いおち○ぽ、

〝ママ〟の中にぃ……!」

 少年のペニスと、女のワレメが近づく。数センチ隔てながらも感じる、ワレメから発せられる熱。律は信じられない速さで鼓動を打つ心臓が口から飛び出しそうな興奮に、顔を真っ赤に火照らせながら身震いする。

(祐美母さんと、祐美母さんとセックスする……セックス、するんだ……!)

 実母と育母。千鶴と祐美。少年の中で、二人は等しく母という存在だった。だが、どちらを慕っていたかと問われれば、祐美と答えるだろう。千鶴に対して不満があったわけではない。彼女に対しても敬愛はある。しかしそれは、あくまでも母親に対する敬いと愛情の域を出ない。だが、祐美に対しては異性の慕情が少なからずあったのだ。それが彼が抱く初めての恋愛感情だということに、彼自身が気づいたのはおそらく今この瞬間だった。

 酷く古風で頭が硬く、まだ女盛りの年頃でありながら、あまりに落ち着きすぎてしまった感のある実母。それに対して、新しもの好きで明るく快活。実母と二歳程度しか違わないというのに、まるで一回りは若いのではないかというほど溌剌とした育母、祐美。二人のギャップは律に女性を意識させ、結果的に祐美が異性であることを強調する要因になっていた。

 祐美の手が亀頭に被った包皮を剥き、棒と穴の位置を合わせる。そして、祐美がゆっくりと腰を沈ませると、初々しい亀頭を露出させたペニスはすんなりと女陰に飲み込まれた。

 ──にゅるッ!

 ペニスの大きさに対して、完全に出来上がっている穴は余裕があり、つるりと滑り込むように全体が収まる。その瞬間童貞を捨て去ったモノが入り込んだそこは、まるでぬめる〝しらたき〟の束の中のような感触。奥まったところほどその〝しらたき〟のような細かな膣肉の襞の感触が密にまとわりつき、きつくペニスを圧搾する。

「あッうぁッ!?

 童貞にはあまりに強烈すぎる名器の刺激。少年の体が快感に痺れ、祐美の大きな尻の下に敷かれた腰がガクガクと震えた。

 ──ぴゅッ! ぴゅッ! ぴゅッ!

 剥けたばかりの亀頭の鋭敏さと、初性交の緊張、慕う育母との結合という異常な興奮も手伝い、膣肉に圧搾されたペニスはひとたまりもなく絶頂に追いやられた。

「あぁンッ! 熱いのがぁッ!?

「あ、あぁ、ごめっ、ごめんなさ……ごめんなさい……ッ」

 ただ入れただけで吐精してしまい、驚きと情けなさで半泣きになりながら、律は自分に騎乗した母に詫び言を繰り返す。

「謝らないでいいのよ? 気持ちよければ出て当然なんだから。ママがもっと気持ちよくしてあげるから、たくさん出しちゃいなさい、ね?」

 涙が今にもこぼれそうな子の頬を優しく撫でて、祐美は微笑む。そんな祐美の中で沸々と沸き立つ律への劣情混じりの愛情。胸を掻き毟りたくなるほどの愛しさ。膣内に感じるペニスの脈動が収まらないうちに、昂ぶる情熱を現すような熱っぽく大きな腰遣いで、豊熟した女尻が上下し始めた。

 律のその容姿や性格は、祐美が潜在的に持つ理想に極めて近かった。実子である祐祉は祐美に似て快活で、男らしく力強い骨格を持った逞しい体付き。立派に、健康に育ったことはなにより喜ばしいことだったが、自立心が強く、母親として世話を焼く、あるいは手を焼いたという記憶はあまりない。甘えてくるということのあまりなかった実子に対し、律は幼少の頃には女の子と見紛うほど可愛らしく、感情豊かで、ことあるごとに甘えてはまとわりついてきた。それが愛おしく、子供たちが同時にいれば意図せず律を偏愛していたかもしれない。そんな律に対する我が子以上ともいえる愛情が、一つのきっかけを得て肉欲と結びつき、そして今こうして性交しているという事実が劣情と喜びを加速度的に増幅させる。

 ──にゅるっ、にちゃっ、ぬっちゃっ、ぬっちゃっ、ぬぢゃっ!

 搾りたての精液がよくぬめる潤滑剤となって、情熱的な腰振りのリズムが加速するのを助けた。膣内で攪拌されるうちに少年のザーメンはブクブクと泡立って、尻の一往復ごとに女陰から溢れ出る。

 膣内一杯、子宮にまでも感じる泡と化した若々しい精液の感触は、少年にとって最初の女という特別な存在になった実感を湧き上がらせる。愛しい子に、唯一無二の存在として自らの名を刻み込んだ無上の喜びが、尻の弾むような動きにも現れていた。

「ンッくはあぁんッ! りっくんの筆下ろしできて、嬉しいっ! 私、りっくんの、最初のオンナにしてもらえたのねッ……!」

 頬を薔薇色に染めて、ありありと歓喜をその顔に表し、腰をスライドさせるように鋭く前後動させて膣肉にペニスを擦りつける。祐祉を産んで以来十数年ぶりにそこにペニスをはめ込んだ悦びと、慈しんできた少年の最初の女となったことの歓びに、三十路半ばの成熟した女体を躍動させた。

「あぁぅッ、うぁぅッ! 祐美母さん、祐美母さぁんッ、ひァッ、はひぃッ!」

 腰の上に、のしっのしっと感じる祐美の体重。密着した太腿や尻のスベスベとした感触。目に映る、祐美の動きに合わせて跳ねる豊乳。汗ばんだ胸の谷間。恍惚の表情。

「あぁァン、ッはあぁッ、はふぅうぅンッ、あッ、いッ、いぃ、ひぁあンッ!」

 生まれてから今まで、実母と等しく接してきた祐美が張り上げる、聞いたことのない淫行に喘ぐ甲高い嬌声。彼女が動き、汗ばむほどに濃くなる女の香り。ぬめる粘膜が擦れ合い、襞が蠢き、成熟した膣肉が未熟なペニスを締めつける。フェラチオで舌が蠢くのとはまた違った、強い密着感のある肉の摩擦は、初性交の感動とともに脳内の快楽中枢を貫く。祐美の尻が上下左右、時には円を描いて動き続ける間、ペニスに絶え間なく入力される快刺激。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、あらゆるところから入ってくる脳細胞を焼き切らんばかりの快感信号に、律は悶絶せんばかりに目を回す。

「あぁン! おち○ぽッ、凄く、イイところに擦れるぅッ! あンッ! あはぁッ! アッ! アッ! すごッ! 気持ちいいンッ! んふぅッ! うンッ!」

 トロリと、法悦に緩んだ唇の端から垂れる涎。祐美の尻の振りは小刻みになり、速い回転数でペニスと膣肉を擦り合わせる。二人が繋がった部分から溢れ出していた泡立った精液は、執拗に攪拌されたためにホイップクリームのような細かい泡の塊となっていた。

「ゆみっ、かあさっ、ボクッ、またッ、またぁッ……!」

 十数年ぶりに、愛の営みの場としての役割を果たしているダブルベッド。高速の尻振りに、ベッドがギシギシと上げる悲鳴に混じって、律の切羽詰まった声が上がる。ペニスの付け根の奥に湧き上がる射精欲。無数の襞がまとわりつきながら包み込んで、握るような強さで締めつける膣肉に、挿入直後の射精からさほど時間を経ずしてペニスに限界が差し迫った。

「ダメッ、まだダメよォ──ッ! 我慢してぇッ! ママも一緒にイクからぁッ!」

 自分より早く果てそうになっている律に、祐美は一声高く張り上げて辛抱を乞う。そして少年の絶頂に追いつこうとしてか、自ら砲弾形の爆乳を持ち上げるように掴み、ビンと尖った乳首を指でしごくように捏ねる。

(ゆ、祐美母さん、すごいッ、エッチな、エッチな顔してるッ……!)

 自らの乳先を熱っぽく責め立てながら、同時に尻の上下動も緩めることのない祐美。その彼女が見せる、猥褻な貌。早くアクメに達しようと、自らを急き立てるように眉間に皺を寄せる眉。目は瞼が半分ほども降り、恍惚に潤んだ瞳が寄り目気味に宙に視線を泳がせる。締まりなく開いた半開きの口からはテンポの速い吐息が絶えず漏れ、唇の端から垂れる涎がシャープな顎先から糸を引いて落ちていた。

 彼女自身による自己刺激は乳首から膣穴まで快感を波及させ、ペニスを咥えた膣肉をきつく収縮させる。ヌルヌルとした肉汁を潤滑として、膣内の細かな襞は剥けたての亀頭を舐るように蠢いて刺激し、律の射精欲を煽り立てる。

 アクメに達しようと快楽を貪る母の、自らの淫乳に自慰を加える浅ましい姿、猥褻な表情。目に飛び込むそれらと、ペニスにとどまることなく加えられる名器母穴の途方もない快悦。湧き上がる射精欲求を抑えられようもなく、律は音を上げる。

「ボクッ、もうッ、ダメぇ……ッ!!

 律の体が仰け反り、突っ張った足が蹴ったブランケットに大きくシワが寄った。

 ──どっぴゅうッ! どっぴゅうッ! どぴゅーッ! どぴゅどぴゅッ!

「アッあぁ──ッ!? もうっ、りっくんったらなんておませさんなのォ──ッ!?

 膣内に弾け出るその日四度目の射精。ペニスが精一杯しゃくり上げて、祐美の膣肉にザーメンを吐きかけていく。じんわりと粘膜に染み入る精液の熱さにうっとりとしながら、祐美は腰の律動を止めてブルブルと尻肉を震わせた。

「ッはー……ッはー……」

 動きを止めて根本までペニスを咥え込んだ膣肉が、キューッと締まっては緩みを繰り返す。精液を搾り出すように、射精に呼応する蠢動。律は祐美の穴が繰り出す優しい搾精に任せて、長く続く射精に微睡みにも似た法悦を味わった。

(気持ちいい……こんな気持ちいいことってあるんだ……)

 半目ほどに閉じかかった視界に、前触れなく祐美の顔が割り込んだ。

「りっくん……」

 少し怒ったように眉間に皺を寄せている。そもそも垂れ目気味で優しげな面立ちのせいで、怒った顔でもまったく怖さを感じさせない。むしろ、汗ばんだ頬を色っぽく上気させたその表情は、交尾の喜悦に蕩けた蠱惑的なものにも見えた。初めて肉を絡み合わせた女のその表情は、律に祐美が優しい母というだけではなく、発情する女の顔を持ち合わせていることを強く印象づける。



「あ……祐美、母さん……?」

「祐美母さん? じゃなくて。ちょっと我慢が足りなさすぎるわよ? 男の子なんだから、少しは我慢しなさい。そりゃぁ、たくさん出しなさいとは言ったけど……」

 少し頬を膨らませて拗ねたような顔になって、ショートカットの毛先を指で弄ぶ。

「まぁ、剥きたて童貞おち○ぽだから仕方ないか……でもちょっと早漏すぎるから、もっと慣らしたほうがいいわね」

 髪を弄んだ指を口元に移し、にんまりと唇の端を緩める。

「えっ? んンッ!?

 律に跨って繋がったまま、祐美は上半身を伏せるようにして少年に覆い被さり、唇を塞ぐ。ねっとりと舌を絡め、唾液をたっぷりと律の口内に流し込む。

「ッふぅ。次は、一緒にイッてね、りっくん」

「えっ、あっ、待って、そんな、続けてなんてぇ……ッ!?

 腰がゆるゆると動き出す。少年の若さに直結したような、ほとんど萎えることなく勃起を維持するペニス。挿入したまま抜くことなく二度射精したそれが、一度も抜かないまま三度目に向けて膣肉にしごかれ始めた。